この記事でわかること
一般貨物自動車運送事業の新規許可を検討するとき、
「運送業を始めるには、いくら資金が必要なのか」
「1,000万円あれば許可を取れるのか」
「トラックをリースにすれば必要資金を減らせるのか」
といった疑問を持つ方は少なくありません。
結論からいうと、一般貨物自動車運送事業の許可には、一律に「○○万円以上」という固定された必要資金額があるわけではありません。
計画する車両、営業所、車庫、人員、燃料費などをもとに「事業開始に要する資金(所要資金)」を計算し、その全額以上の自己資金を確保することが必要です。
そのため、同じ5台からスタートする運送会社でも、車両を購入するのかリースするのか、営業所や車庫を所有するのか借りるのか、人件費をいくら見込むのかによって必要資金は変わります。
この記事では、関東運輸局で一般貨物自動車運送事業の新規許可を申請する場合を中心に、必要資金の考え方、計算に含める費用、残高証明書を準備するときの注意点を解説します。
運送業許可にはいくら必要なのか
一般貨物自動車運送事業の新規許可について、
「最低1,000万円必要」
「2,000万円用意しなければならない」
など、具体的な金額を聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、許可基準として一律に「最低○○万円」と決められているわけではありません。
必要なのは、自社の事業計画から算出した所要資金の全額以上の自己資金を確保することです。
たとえば同じ5台で事業を始める場合でも、
・トラック5台を購入する
・トラック5台をリースする
・すでに所有している車両を使用する
というケースでは車両費が変わります。
営業所や車庫についても、
・自社所有の物件を使用する
・新たに購入する
・賃貸物件を使用する
といった条件によって計上する金額が変わります。
したがって、
「運送業許可にはいくら必要ですか?」
という質問に対しては、事業計画を確認しないまま一律の金額を答えることはできません。
まず、どのような事業計画で運送業を始めるのかを具体化し、その計画に沿って必要資金を計算することになります。
所要資金には何を含める?
関東運輸局の一般貨物自動車運送事業の許可申請では、「事業開始に要する資金及び調達方法」を作成します。
主に計上するのは、次のような費用です。
人件費
運転者だけでなく、
・役員報酬
・運行管理者
・整備管理者
・事務員
など、事業計画に必要な人員の給与・手当等を計算します。
さらに、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの法定福利費についても適切に見込む必要があります。
燃料費・油脂費・修繕費
トラックを運行するための燃料費だけでなく、油脂費や修繕費なども所要資金に含まれます。
車両台数や月間走行距離などをもとに、実際の事業計画に合わせて計算します。
車両費
車両を購入するのか、リースするのかによって計算方法が異なります。
後ほど詳しく説明します。
営業所・車庫・休憩睡眠施設などの費用
運送業を始めるためには、営業所だけでなく、車庫や必要に応じた休憩・睡眠施設も確保します。
賃貸の場合には、その賃料なども資金計画に反映します。
税金・保険料
事業用自動車について必要となる自動車税、自動車重量税、自賠責保険、任意保険なども計上します。
その他の費用
事業開始に必要となる什器・備品や、水道光熱費、通信費なども資金計画に関係します。
また、一般貨物自動車運送事業の新規許可では、許可後に登録免許税12万円が必要です。
車両・営業所・車庫はいくら計上する?
必要資金が大きく変わりやすいのが、車両と事業用施設です。
車両を購入する場合
一括払いで購入する場合は、原則として取得価格を計上します。
分割払いの場合は、頭金と1年分の割賦金を計上します。
すでに所有している車両については、関東運輸局の申請書作成の手引き上、取得価格から除くことができるとされています。
車両をリースする場合
リース契約の場合は、原則として1年分のリース料を計上します。
そのため、
「車両を買わずにリースすれば、車両費をゼロにできる」
というわけではありません。
営業所・車庫などを借りる場合
営業所、車庫、休憩・睡眠施設などを賃借する場合は、1年分の賃借料に加えて敷金等を計上します。
購入する場合は、一括購入なら取得価格、分割の場合は頭金と1年分の割賦金を計上します。
このため、物件の賃料が高ければ、必要となる自己資金も大きくなります。
また、営業所や車庫は「資金を用意できるか」だけでなく、立地や使用権原、関係法令、車庫の収容能力など、別の許可要件も確認しなければなりません。
物件を契約してから許可要件を確認するのではなく、契約前に確認することが重要です。
人件費・燃料費などは6か月分を計上
一般貨物自動車運送事業の必要資金を考えるうえで、特に見落としやすいのが運転資金です。
関東運輸局の現在の申請様式では、
・人件費
・燃料費
・油脂費
・修繕費
などについて、原則として6か月分を見込んで計算します。
たとえば運転者5人を雇用する計画であれば、単純に初月の給与だけを用意すればよいわけではありません。
6か月分の給与等を資金計画へ反映する必要があります。
燃料費についても同様です。
計画する月間総走行距離、燃費、燃料単価などから算出した金額をもとに6か月分を計上します。
そのため、車両を安く確保できたとしても、
「人件費を含めると想定より必要資金が大きくなった」
ということがあります。
新規許可を検討するときは、車両購入費だけを見て開業資金を判断しないことが重要です。
保険料・税金は1年分を計上
事業用自動車については、
・自動車重量税
・自動車税
・自賠責保険
・任意保険
について、原則として全車両の1年分を計上します。
また、一般貨物自動車運送事業では、適切な損害賠償能力を備えていることも許可要件の一つです。
そのため、単に安い保険料を資金計画に入れればよいのではなく、事業計画に適した補償内容になっているかについても確認する必要があります。
自己資金はいくら必要?
所要資金を計算したら、次に確認するのが自己資金です。
関東運輸局の許可基準では、算出した所要資金の全額以上の自己資金を確保することが求められています。
たとえば、事業計画を積み上げた結果、
所要資金が1,800万円
となった場合には、
「1,000万円程度あれば運送業許可を申請できる」
という考え方では足りません。
この場合は、原則として1,800万円以上の自己資金を確保できるかを確認することになります。
逆にいえば、最初から「1,500万円」「2,000万円」といった固定額で判断するのではなく、
自社の事業計画を作る
↓
所要資金を計算する
↓
必要な自己資金額が決まる
という順番で考えることが重要です。
残高証明書は「申請時に一度出せば終わり」ではない
資金要件で特に注意したいのが、自己資金を確認するタイミングです。
関東運輸局では、所要資金の全額以上の自己資金について、申請日以降、許可日までの間、常時確保されていることを求めています。
自己資金は預貯金を基本とし、残高証明書などによって確認されます。
さらに、許可までの審査途中で、改めて残高証明書等の提出を求められることがあります。
つまり、
「申請日に必要額が口座に入っていれば、その翌日に使ってもよい」
という考え方ではありません。
申請から許可まで、必要な自己資金を維持する必要があります。
2回目にお金を増やせばよいとは限らない
ここは特に注意したいポイントです。
関東運輸局の手引きでは、2回目の資金確認は1回目に確保していた資金の確認という位置づけになっています。
そのため、たとえば、
申請時:1,000万円
2回目:1,500万円
となったからといって、自己資金として1,500万円がそのまま認められるとは限りません。
申請時点から資金計画を整えておく必要があります。
また、複数口座を使って自己資金を証明する場合にも、1回目と2回目で同一口座を確認するなどの注意点があります。
「足りなければ審査中に入金すればよい」と考えず、申請前に必要資金を正確に算定しておくことが重要です。
「借入金があると許可を取れない」とは限らない
運送業許可の資金要件については、
「銀行から借りたお金は自己資金にならないのでは?」
と心配されることがあります。
しかし、単に「借入金がある」という事実だけで直ちに許可を取得できないという制度ではありません。
重要なのは、申請する事業について必要となる所要資金を算出し、許可基準に沿った自己資金を確保できているかどうかです。
ただし、資金の内容や挙証方法によって判断が必要になる場合があります。
融資を利用して開業を予定している場合には、
いつ融資が実行されるのか
も含めて、許可申請のスケジュールと資金計画を早い段階で整理しておくことをおすすめします。
必要資金は物件や車両を契約する前に計算する
運送業への新規参入で避けたいのが、
「営業所を契約した」
「車庫も契約した」
「トラック5台も決めた」
という段階になってから、必要資金を計算するケースです。
この段階で所要資金を計算して、
「自己資金が足りない」
となると、事業開始の計画そのものを見直さなければならない可能性があります。
さらに、営業所や車庫については資金要件とは別に許可要件があります。
そのため、新規参入を検討するときは、
営業所・車庫の候補を確認
↓
車両の取得方法を確認
↓
必要な人員を確認
↓
所要資金を試算
↓
自己資金を確認
↓
契約・許可申請へ
という順番を意識することが重要です。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の新規許可には、「最低○○万円」という一律の必要資金額が定められているわけではありません。
車両費、営業所・車庫等の施設費、人件費、燃料費、修繕費、保険料、税金などを事業計画に沿って積み上げ、算出された所要資金の全額以上の自己資金を確保する必要があります。
特に、
・人件費や燃料費などは6か月分
・車両のリース料は1年分
・営業所や車庫等の賃借料は1年分+敷金等
・自動車税や保険料などは1年分
など、実際の開業時に支払う直近の金額だけではなく、一定期間分を見込む項目があります。
さらに、必要な自己資金は申請時だけではなく、申請日以降、許可日まで常時確保しておく必要があります。
運送業への新規参入を検討するときは、車両や物件を先に契約するのではなく、事業計画と必要資金をセットで確認してから進めることが重要です。
一般貨物自動車運送事業の新規許可をご検討の方へ
松井法務行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業の新規許可をはじめ、営業所・車庫等の変更、増車・減車などの手続きをサポートしています。
代表行政書士は、旅客運送の現場でバス運転士として20年以上勤務した経験があります。
「自分の事業計画では、いくら自己資金が必要になるのか確認したい」
「トラックを購入するかリースにするか検討している」
「営業所や車庫を契約する前に、許可要件と必要資金を確認したい」
「融資を利用して運送会社を始めたいが、申請のタイミングがわからない」
といった場合は、車両や物件の契約を進める前にご相談ください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。 実際に必要となる許可・届出・書類等は、 事業内容や個別の状況によって異なる場合があります。 具体的な手続については、 最新の法令・行政庁の案内をご確認いただくか、 個別にご相談ください。
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