一般貨物自動車運送事業の許可を取得した後は、営業所や車庫の変更、増車・減車などの手続きだけでなく、毎年提出する報告書にも注意が必要です。
その一つが「事業報告書」です。
運送会社を経営している方の中には、
「決算が終わったけれど、運輸局にも何か提出するのか」
「事業報告書はいつまでに出せばよいのか」
「事業実績報告書とは何が違うのか」
「税務署へ決算書を提出しているから、運輸局への報告は不要ではないか」
と疑問を持つ方もいるかもしれません。
一般貨物自動車運送事業者は、毎事業年度終了後100日以内に事業報告書を提出する必要があります。
また、これとは別に「事業実績報告書」があり、毎年7月10日までの提出が必要です。
この記事では、一般貨物自動車運送事業の事業報告書について、提出期限、必要書類、事業実績報告書との違い、提出を忘れないためのポイントを解説します。
一般貨物自動車運送事業の事業報告書とは
一般貨物自動車運送事業者は、貨物自動車運送事業報告規則に基づき、定期的に事業の状況を報告する必要があります。
その一つが事業報告書です。
事業報告書では、会社の事業概況や財務状況、人件費などについて報告します。
税務署に提出する法人税申告書などとは別の手続きであり、
「決算・税務申告が終わったから、運送業に関する報告も終わり」
というわけではありません。
一般貨物自動車運送事業の許可を維持して事業を続けている場合には、毎事業年度について所定の事業報告書を提出する必要があります。
事業報告書の提出期限は「決算後100日以内」
一般貨物自動車運送事業の事業報告書は、
毎事業年度の経過後100日以内
に提出します。
つまり、すべての運送会社で同じ月日が提出期限になるわけではありません。
会社ごとの**事業年度の終了日(決算日)**を基準として期限を計算します。
たとえば、3月31日決算の会社であれば、その事業年度が終了した日から100日以内に提出します。
一方、9月決算や12月決算の会社であれば、それぞれの決算日を基準として100日以内となります。
この点が、毎年7月10日という固定期限がある「事業実績報告書」と大きく異なる点です。
事業報告書では何を提出する?
貨物自動車運送事業報告規則では、一般貨物自動車運送事業者の事業報告書として、主に次の書類を提出することになっています。
事業概況報告書
会社の概要や事業の状況などを報告する書類です。
貨物自動車運送事業報告規則の第1号様式を使用します。
一般貨物自動車運送事業損益明細表
一般貨物自動車運送事業に関する収益・費用などを記載する書類です。
第2号様式を使用します。
一般貨物自動車運送事業人件費明細表
給与、手当、社会保険料など、事業に係る人件費の内容を記載する書類です。
第3号様式を使用します。
貸借対照表・損益計算書
会社の決算に係る貸借対照表・損益計算書も提出します。
運輸局の作成手引きでは、これらについては事業者が通常使用している決算書を用いることができると案内されています。
そのため、事業報告書の作成は、基本的には決算が確定した後に進める手続きとなります。
事業報告書と事業実績報告書は別の書類
一般貨物自動車運送事業者が特に混同しやすいのが、
事業報告書
と
事業実績報告書
です。
名称は似ていますが、提出する内容も提出期限も異なります。
事業報告書
対象期間:
毎事業年度
提出期限:
事業年度終了後100日以内
主な内容:
会社の事業概況、財務状況、人件費など
事業実績報告書
対象期間:
前年4月1日から当年3月31日まで
提出期限:
毎年7月10日
主な内容:
車両数、輸送実績など
つまり、
「事業報告書を提出したから、事業実績報告書は不要」
ということにはなりません。
一般貨物自動車運送事業者は、原則として両方をそれぞれの期限までに提出する必要があります。
決算月によって事業報告書の期限は変わる
事業報告書について覚えておきたいのは、
「毎年○月○日まで」と覚えないこと
です。
会社ごとに決算日が異なるため、提出期限も異なります。
たとえば、3月決算の会社であれば3月31日の翌日から100日以内、12月決算であれば12月31日の翌日から100日以内という考え方になります。
そのため、
「他の運送会社が7月ごろ提出していたから、自社も同じ」
とは限りません。
自社の事業年度終了日を確認したうえで、正しい期限を管理する必要があります。
「事業実績報告書」は決算月に関係なく7月10日
一方、事業実績報告書は考え方が違います。
事業実績報告書の対象期間は、
前年4月1日から当年3月31日まで
と全国共通で決められており、提出期限は毎年7月10日です。
そのため会社の決算月が、
3月
6月
9月
12月
のいずれであっても、事業実績報告書の提出期限は原則として7月10日です。
この違いを整理しておくと、提出漏れを防ぎやすくなります。
どの一般貨物自動車運送事業者が提出する?
事業報告書は、大規模な運送会社だけが提出するものではありません。
一般貨物自動車運送事業を経営している事業者について、事業規模や法人・個人にかかわらず提出が必要と案内されています。
「トラックが5台しかないから提出しなくてもよい」
「売上が少ないから提出対象外」
という制度ではありません。
一般貨物自動車運送事業の許可を受けて事業を行っている以上、毎年の報告義務を確認しておく必要があります。
許可を取ったばかりの会社も注意
一般貨物自動車運送事業の新規許可を取得した後は、
・運転者の確保
・運行管理
・整備管理
・営業活動
・請求や経理
などに追われ、許可取得後に必要となる行政手続きを忘れてしまうケースがあります。
しかし、運送業許可は、
「許可を取ったら手続きが終わる」
制度ではありません。
許可後も、
・増車・減車
・営業所や車庫等の変更
・運行管理者・整備管理者の変更
・事業報告書
・事業実績報告書
など、さまざまな手続きが発生します。事業報告書を作成するときに準備したいもの
事業報告書を作成するときには、まず決算関係の資料を準備します。
一般的には、
・貸借対照表
・損益計算書
・法人の場合は会社の基本情報
・従業員・人件費に関する資料
・運送事業に関する売上・費用の資料
などを確認しながら作成していきます。
特に、他の事業も行っている会社では注意が必要です。
一般貨物自動車運送事業以外にも複数の事業を行っている場合、会社全体の数字をそのまま記載すればよいとは限らず、運送事業に係る数字を整理する必要が生じることがあります。
そのため、決算書が完成してから慌てて作成するのではなく、毎年提出する手続きとして社内でスケジュールを決めておくことをおすすめします。
提出を忘れた場合はそのままにしない
事業報告書の提出期限を過ぎてしまった場合、
「期限を過ぎたから、もう提出しなくてよい」
ということにはなりません。
一般貨物自動車運送事業者には、貨物自動車運送事業報告規則に基づく報告義務があります。
運輸局の現行手引きでも、事業報告書や事業実績報告書を提出しない場合や虚偽の報告をした場合には、法令上の罰則や行政処分の対象となる場合があることが案内されています。
そのため、未提出に気づいた場合には、そのまま放置せず、必要な対応を確認することが重要です。
特に、
「何年分か提出していないかもしれない」
「前任者が担当していたので提出状況がわからない」
「事業報告書と事業実績報告書のどちらを提出したかわからない」
という場合には、まず過去の提出状況を整理する必要があります。
毎年の期限を一覧で管理しておく
許可取得後の手続きを漏らさないためには、会社独自の「運送業手続きカレンダー」を作っておく方法も有効です。
たとえば、
決算後
→ 事業報告書の準備
事業年度終了後100日以内
→ 事業報告書提出
毎年7月10日まで
→ 事業実績報告書提出
というように年間スケジュールへ登録しておきます。
さらに、
・運行管理者や整備管理者の変更
・増車・減車
・営業所や車庫の変更
については、変更が発生した都度、必要な届出・認可がないか確認する仕組みを作っておくと安心です。
まとめ
一般貨物自動車運送事業者は、毎事業年度終了後100日以内に事業報告書を提出する必要があります。
事業報告書では、
・事業概況報告書
・一般貨物自動車運送事業損益明細表
・一般貨物自動車運送事業人件費明細表
・貸借対照表
・損益計算書
などを提出します。
また、事業報告書とは別に、前年4月1日から当年3月31日までの実績を報告する事業実績報告書を毎年7月10日までに提出する必要があります。
特に注意したいのは、
事業実績報告書=毎年7月10日
という期限の違いです。
一般貨物自動車運送事業は、許可を取得して終わりではありません。
毎年の報告や変更手続きを適切に管理し、許可後も法令に沿った事業運営を続けることが重要です。
事業報告書・許可取得後の手続きでお困りの方へ
松井法務行政書士事務所では、一般貨物自動車運送事業の事業報告書・事業実績報告書をはじめ、増車・減車、営業所・車庫等の変更、各種変更手続きをサポートしています。
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